家は作品。人と、ペットと、同じ時間を味わう平屋
― 石川県七尾市・M邸 / concept:spend with pets ―
第1部|出会いと想い
「人も猫も、同じ空間で気持ちよく過ごせる家にしたかった」
建築やインテリアが好きで、
住まいそのものを“味わう対象”として考えていたMさん。
同時に、暮らしの中で欠かせない存在だったのが、2匹の愛猫でした。

「ペットのため、というより、
一緒に過ごす時間そのものを大事にしたかったんです。
どちらかが我慢する家にはしたくなくて」
人のための動線と、猫のための居場所。
それを無理に分けるのではなく、同じ空間の中に自然に重ねる。
それがMさんの家づくりの前提でした。
家元との最初の打ち合わせでも、
要望として強く出てきたのは「間取り」よりも「過ごし方」。
担当ディレクターの伊藤はこう振り返ります。
「“猫のために何をつくるか”という話より、
“この家で、どんな時間が流れていたら心地いいか”
その話を何度もしました」
第2部|設計と挑戦
人の暮らしに、ペットの気配が溶け込む設計
M邸の設計は、
ホテルライクで静かな空間をベースにしながら、
その中に“生き物の動き”が自然に入り込むことを意識しています。



キャットウォークを兼ねた造作本棚は、
猫の動線であると同時に、人の視線を上へと導くデザイン要素。
窓際のベンチは、
人にとってはくつろぎの場所であり、
猫にとっては外の気配を感じる特等席です。


「いかにも“ペット用”に見えないように、
最初から設計の一部として組み込んでいます」
と伊藤。
床材や素材選びも同様です。
床材はフロアタイルを採用。室内であまり走らないのんびり屋な猫ちゃん達なので、お掃除しやすさを重視しました。造作建具にはブラックチェリーの無垢材を採用。見た目の美しさだけでなく、質感や経年変化まで含めて選ばれました。

「人も猫も、毎日触れる場所だからこそ、
“長く一緒に時間を過ごせる素材”であることを大事にしました」
照明計画も最低限に抑え、
猫が落ち着いて過ごせる明るさと、
人がリラックスできる陰影のバランスを探っています。



第3部|暮らしの現在
同じ空間で、別々の時間を過ごせる心地よさ
完成後、Mさんが一番感じている変化は、
「家にいる時間の質」だといいます。
「猫がどこにいても、気配を感じられる。
でも、邪魔にならない距離感なんです」
リビングで読書をするMさんの横を、
静かにキャットウォークで移動する猫たち。
庭を眺める時間も、夜の静かな食事の時間も、
人とペットが同じ空間を共有しながら、
それぞれのペースで過ごしています。
「外食より、家で過ごす時間の方が好きになりました。
猫たちも、前より落ち着いている気がします」
伊藤は、暮らし始めてからの様子を見て、こう感じたそうです。
「“ペットと暮らす家”というより、
“暮らしの中にペットがいる家”。
それが一番しっくりくる表現だと思いました」
編集後記|spend with petsという考え方
家元が考える spend with pets とは、
ペットのために特別な空間を用意することではありません。
人の暮らしを中心に据えながら、
同じ時間、同じ空間を、無理なく共有できること。
M邸は、
人とペットが対等に、静かに心地よさを分かち合う住まいです。
家は、暮らしの器。
そして、その暮らしには、
大切な存在が自然に含まれていていい。
家元の家は、
そんな時間を、これからも丁寧にかたちにしていきます。
